がん、遺伝より生活習慣が問題
日本で最も短命な県は「青森県」です。厚生労働省が5年に一度、都道府県の平均寿命を発表しているが、トップの県は入れ替わっても、ビリは昭和50年から毎回、青森県なのである。
遺伝より生活習慣が問題になる根拠。
がん、心疾患、脳疾患は「生活習慣病」という総称どおり、生活習慣が病気の発症に大きく影響する。というと、いやいや「がん家系」という言葉があるように、がんになるには「遺伝が大きい」と考える人もいるかもしれない。
かつてハリウッド女優のアンジェリーナジョリーさんが遺伝子検査を受け、「乳がんの発症リスクが高い」という結果から、乳房を予防的に切除したことが話題になった。
しかし、国立がん研究センターがん登録センター全国がん登録室室長で「がんで死ぬ県、死なない県、なぜ格差が生まれるのか」(NHK出版新書)
購入はこちらの著書がある松田智大氏によると「そのような遺伝に起因するがんは少ない。全体の5%以下」という。
「ハワイ在住の白人と、ハワイに移住した日本人で「がんのかかりやすさ」を比較した研究があります。もともと日本人には胃がん、白人には乳がんが多いのですが、ハワイに移住した日本人は、現地の白人の乳がんの発症率に近づいていきます。
そこに移住して同じような生活を送ると、がんのかかりやすさも似てくるということです。つまり環境の影響の方が大きい」
夫婦や親族で同じがんにかかりやすいケースも、生活スタイルが似ているためだと考えられるという。
生活習慣の調査・分析
弘前大学特任教授の中路重之氏の研究グループは県民の健康調査を実施し続け、どのような生活習慣や環境が寿命を縮めてしまうのか、分析をしている。
「環境的な面でいえば、県民の所得、医師数、医療機関などの数は長野県と青森県で大きな差はありません。どちらも冬は雪深い地域で、ほぼ同じ医療レベルを持つ。
しかし、人口10万人あたりの「保健師さんの数」が長野県は国内で一番多く、青森県は25位。これは自治体や県民の健康に対する姿勢を物語っています。
県民が個々の健康教養を高め、健康増進や病気の予防に励む。そこに健康リーダーとしての保健師の役割は大きく、その部分に長野県が力を入れているということでしょう」と中路氏はいう。
青森県と長野県での比較
そして生活習慣は、やはり長野県民が素晴らしい。
「青森県では喫煙率、飲酒率、肥満率、野菜摂取量、健康診断受診率、歩数、スポーツする人の割合が、すべてにおいて少しずつ、長野県よりもデータが悪い。総合力で劣っているのです。
つまり青森県民は飲酒や喫煙習慣があり、運動不足で、健康診断受診率が低く、病院受診が遅く、通院もきちんとしない。そうなるとがんを発症して、見つかったときには進行しているケースが多い。
糖尿病になって通院をさぼれば、悪化させて人工透析になってしまいます。長野県は塩分摂取量が多いのですが、総合力の高さでかき消しています。」
生活習慣の指標
厚生労働省が示す指標で飲酒は1日にビール中ビン1本程度までとされ、野菜は1日に350グラムの摂取目標です。塩分摂取は、大規模な欧米の研究から血圧を下げるために1日6グラム未満にすることが必要とされている。
歩数は1日1万歩が理想とされるが、現在は男女ともにそれを下回っているので、1日1000歩増加(現在にプラス約10分の歩行)を目標としている。体重は肥満指数のBMIが25未満に。
健診を毎年受診し、病があるなら適切な受診を。
雑誌プレジデント、「あなたVS寿命」より引用