Q:夜、就寝中に肛門がかゆくなることがあります。便秘の時に多いのですが、原因は何でしょうか(48歳女性)
肛門がかゆくなることは珍しくなく、「肛門搔痒症」という病名もついています。
直接的な原因は特定できないことが大半ですが、背景となる原因はいくつか考えられます。
まず、肛門のまわりの皮膚は敏感なので、例えば便に含まれる香辛料やコーヒー、チョコレートなどの刺激物でかゆくなることがあります。
あとは温水洗浄便座で洗いすぎることで皮脂がとれてかぶれたり、石けんやアルコールなどの化学物質の刺激で皮膚が荒れてかゆくなることもあります。
肛門に塗る痔の治療薬などが合わないのが原因のこともあるし、いぼ痔が肛門から出る時に粘膜が出て、その刺激でかゆくなることもあります。
便秘で硬い便を無理に出すと「裂肛」といって肛門の中に小さな傷がつくことがあります。
排便時に強い痛みを感じるのが特徴ですが、少し治ってくるとかゆみに変わることもあります。 思い当たりこることがあれば、要因となることを減らすようにしましょう。
かゆいときにひっかいたり、ごしごしと洗いすぎると皮膚が傷ついて一層かゆくなるので、ひっかいたりせず、市販のかゆみ止めを塗るのがいいでしょう。
ただし、カンジダという真菌(カビ)が感染してカンジダ性皮膚炎を起こすこともあり、この場合は放置しても自然に治ることはないので、治療をうけなければなりません。
Q:急な便意を我慢できずにもらしてしまうことがあります。 仕事中や友人といる時は大丈夫ですが、帰り道や買い物中など気が緩んでいるときに多いです。改善法はありますか(43歳女性)
便失禁防止には、規則正しい排便習慣が基本。手術などの治療法もある。
便失禁には大きく2つのタイプがあります。
1つはこの方のように我慢しきれずに漏れてしまう「切迫性」、もう一つは気づかないうちに漏れている「漏出性」です。
肛門の括約筋は二重構造になっていて、内側の括約筋は無意識に縮めている筋肉。これが衰えると漏出性便失禁になります。
一方、外側の括約筋は意識的に縮めることができる筋肉で、これが弱くなると便意を我慢できなくなって切迫性便失禁を起こしやすくなります。
女性の場合、出産で会陰部に裂傷を起こして肛門の括約筋を傷つけることがあり、年を取ってから便失禁をしやすくなることもあります。
括約筋が断裂している場合はそれを修復する「括約筋形成術」という手術を行います。
出産経験がなくても、女性はもともと括約筋の力が男性よりも弱いので、高齢になると便失禁を起こしやすくなります。
便失禁を防ぐには、便の形状(硬さ)が大切です。 ひどい下痢をしているときは括約筋が弱くなくても漏れることがあるし、逆にしっかりした便が規則正しく出る人は、括約筋が弱くても漏れにくい。
まずは、便通を規則的にして、便を漏れにくい形状(硬さ)に維持することが大切です。
そのためには、食事にも気を付けなければいけません。脂っこいものや乳製品など、お腹が緩くなる食べ物に注意し、水分を取りすぎないようにします。
外側の括約筋は意識して締められるので、切迫性の場合、「骨盤底筋体操」で括約筋を鍛えればうまく締められるようになる方もいます。 この体操は、姿勢は経っていても座っていても、仰向けに寝ていてもOK。
肛門を5秒間締める、それを10回続けて1セット、これを毎日5セット行う。
切迫性の治療では、ほかに「バイオフィードバック療法」というのもあります。
自分では肛門を縮めているつもりでも、お尻の大きな筋肉に力が入ってしまい、ちゃんと音側の括約筋が縮められてない方がいます。
そんな場合に肛門の締り具合をモニターに表すセンサーをお尻に入れて、括約筋を縮める感覚を、画面を見ながら覚えてもらう方法です。
薬としては、便の水分を吸収して硬くする便形状改善薬があります。ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル、ポリフルほか)といって、過敏性腸症候群に使われる処方薬です。
それでも便が柔らかい場合は、必要に応じて下痢止め薬を用い、腸の過敏なぜん動運動を抑えます。
薬物療法やバイオフィードバック療法などで改善が見られない場合には、「仙骨神経刺激療法」もあります。
骨盤内に小型の装置を埋め込む手術を行い、仙骨神経という神経を電気的に刺激する方法で、2014年から保険適用になっています。
改善率も高く、8割の人は漏れる回数が半分以下になることが確認されています。
Q:便のキレが悪く、すっきりしにことが頻繁にあります。加齢のせいかと諦めるしかないのかもしれません、対策があれば教えてください。 (54歳女性)
残便感は便秘症状の一つです。加齢に伴い、男女ともに便秘が増えてきます。運動や食事の量が落ちることもあるし、腸のぜん動運動が弱くなるせいもあるでしょう。
この方のように50代になれば、若いころと違ってやや便秘気味になることもあると思います。 まずは、食物繊維の多い食事をとるようにする。食事だけで改善しなければ薬です。
酸化マグネシウムのように腸を刺激せずに便を柔らかくする薬、便の中の水分を増やす薬、小腸からの腸液を分泌させる薬など、いろいろな種類があります。
食事や運動だけでは治らないようであれば、消化器内科や大腸肛門科を受診することをお薦めします。
Q:昨年の便潜血検査は陽性でしたが、今年は陰性に。症状はありませんが、精密検査を受けなくても大丈夫ですか。(40歳女性)
便潜血検査で陽性が出た人は大腸内視鏡検査などの精密検査を受けることをお薦めします。
陽性でも異常がない場合もありますが、2~3%に大腸がんが見つかりますし、また3~4割はポリープが見つかりますから。
去年陽性で精密検査を受けていないのであれば、今年の便潜血検査が陰性でも受けたほうがいいと思います。
陽性でも精密検査を受けたら何もないことも多いですが、逆に便潜血検査が陰性でも病気が隠れていることはあります。
Q:便をする回数が多く、通勤にも差し支えるほど。どうすれば2時間以上我慢できるようになります。(60歳男性)
大腸がんで便の回数が増えることもあるので、50歳以降に不調がでたなら受診を勧めます。
回数が多いということは軟便なのだろうと思います。水分の取りすぎなど、日常生活の問題があるのかもしれません。 まずはそこに注意することです。
大腸がんになって便の回数が増えることもあります。50歳以降にこうした排便の不調が出てきたという方は、まず大腸がんを念頭に置かなければいけないので、1年以上検査を受けていなければ大腸の内視鏡検査を受けるべきです。
頻繁にトイレに行く原因がわからなければ、消化器内科や大腸肛門科を受診するのがいいでしょう。
Q:排便の時肛門が切れてかなりつらいです。とりあえず市販の軟膏をつけていますが、病院に行くべきでしょうか(67歳男性)
これは「裂肛」といって、典型的な切れ痔の症状です。
市販の薬をつけて良くならなければ、受診することをお薦めします。「痛いから我慢する」→「我慢すると便が硬くなる」→「ますます硬くなる」と悪循環に陥る人も多いです。
病院で出す薬としては、まず痛みや出血を抑える作用のある坐薬や軟膏があります。
便が固いと切れやすいので、酸化マグネシウムなど便を柔らかくする軟便剤を出すこともあります。
薬を飲んでも改善しなければ手術です。 切れ痔の人は肛門が広がりにくいことが多いので、肛門を少し広げる手術をします。
Q:最近、便が硬くなり、毎朝の排便でかなり、いきまなければなりません。このままいきむ排便を続けていても大丈夫でしょうか?(62歳男性)
排便は便意がある時に短時間で、いきまず自然に出すのが理想で、無理にいきむ排便は「百害あって一利なし」です。
いきむことで悪化しやすいのは、まずいぼ痔。いきむ排便をくり返していると肛門周辺の組織がうっ血して、その一部が膨らんでいぼ痔になりやすくなります。
いきむ習慣を続けるとさらにいぼ痔が悪化し、いぼ痔がいつも肛門から脱出している状態になったり出血を起こしやすくなったりします。
直腸が肛門の外に脱出する「直腸脱」になることもあります。 いきまないと出ないというのは便秘症状ですから、まず便秘対策をすることです。食事内容や水分摂取に気をつけることに加え、適度な運動も心がけることです。
また、いきむとしても3分以内に。トイレに10分入っても出ないようなら、諦めて一度トイレから出ましょう。
なかには30分とか1時間もトイレにこもる人もいますが、長時間トイレにこもっていると、うっ血が進んでいぼ痔が悪化します。
Q:40年いぼ痔持ちです。特に痛みはなく、日常生活に支障はありませんが、排便時に出たいぼ痔が自然に戻らないので指で押して戻すのがおっくうです。 1回の注射でいぼ痔が治るという話を聞いたのですが、本当でしょうか。?(73歳男性)
いぼ痔の症状は出血と、いぼ痔の肛門からの脱出で、肛門から脱出していないときは痛みもないのが普通です。
初期のいぼ痔は排便時に脱出しても自然と元に戻るのですが、慢性化すると自然には戻らなくなります。
いちいち指で押し戻さなければいけないのは不快ですが、いぼ痔自体はそれほど危険な病気ではありません。
この方は「うっとうしい」と言っていますが、「面倒じゃない」という人は、がんになることはありませんし、放っておいてもいいと思います。
ただ、脱出に不快感がある人は手術でいぼ痔を切除したほうがいいです。 出血だけなら坐薬で治ることも多いですが、大きくなったいぼ痔は薬を使っても小さくなりません。
脱出症状は坐薬ではあまり改善しません。手術をする場合、1週間くらい入院することになります。
硬化療法(注射療法)という注射による治療法もあります。 これはいぼ痔を硬くする薬を注射して、脱出や出血をおこしにくくするというものです。
確かに1回の注射で効果が出ますが、痔がなくなるわけではないので効果は一時的で長くは続きません。 したがって、「1回で治る」といういい方は正しくありません。
いぼ痔の治療法には、ほかにもゴム輪結紮という治療法もあります。
いぼ痔には直腸側の粘膜にできる「内痔核」と肛門の皮膚にできる「外痔核」があり、痛覚(痛みの感覚)のない内痔核にしかこのこの治療はできないのですが、内痔核をゴム輪で縛り、血流を遮断することでいぼ痔の組織を壊死させ、自然に脱落させます。
Q:25年ほど前にいぼ痔の手術を受けましたが再発し、最近は排便のたびに飛び出したいぼ痔を指で肛門に押し戻してます。 市販薬を塗っても効果がありません。再び手術を受けなければ治らないでしょうか?(60歳男性)
手術をしたのが25年前だとすると、再発はあります。また「血栓性外痔核」といって普段イボがない方に突然できる血豆によるいぼ痔もあります。
この血栓性外痔核は手術や軟膏で治療しますが、時間がたつといずれは自然に小さくなり、消えてなくなります。
再発したいぼ痔はもう一回手術することもできますし、手術以外にも硬化療法や、いぼ痔の種類によってはゴム輪結紮もできます。
必ずしも手術を受けなければ治らないわけではありません。 手術以外にも方法はあるので、とにかく受診してみましょう。
Q:30代のときに大腸内視鏡を受けて以来、直腸脱が起こるようになりました。 腹腔鏡手術を検討中ですが、腸を縫う糸は一生体内に入れたままにできるほど耐久性があるのでしょうか。手術を受けると、塗った部分が化膿したり、便秘しやすくなったり、内視鏡検査を受けにくくなったりしませんか。(48歳女性)
直腸脱とは、ピンポン玉からソフトボールくらいの大きさで、直腸がひっくり返って外に出てくる病気です。一般的には骨盤の中の腸を支える力が弱くなっている70~80代の高齢の女性に多いのが特徴です。
40代などの若い人の直腸脱は、慢性の便秘でいきむ習慣が原因になることが多いです。 30代のころから直腸脱があったということは、かなりいきむ排便習慣があるのではないかと思います。
この方は大腸内視鏡検査が原因と考えているようですが、内視鏡検査の影響で直腸脱になることはありません。
治療法は手術のみ。手術法の第一選択は腹腔鏡手術です。
傷が小さいので回転が早く、翌日から歩けますし、約一週間で退院できます。再発率も肛門から行う手術が3~4割なのに対して、腹腔鏡手術の再発率は7%前後と低く、1回の手術ではほとんどの方が完治します。
当院でやっている手術では、溶けないナイロン糸で骨盤の表面のしっかりとした膜に直腸を縫いつけて固定します。
溶けない糸なので、耐久性は半永久的で一生もちます。 後遺症については、滅多にないことですが、縫うとき腸に炎症を起こして化膿する可能性は1%ほどあります。
また糸で縫う時は大丈夫ですが、糸で縫わずにメッシュで腸を固定する手術の場合は術後に便秘を起こすこともあります。
内視鏡検査は術後も普通に受けられます。 この方は若いので、排便でいきむときだけ出るのだと思いますが、高齢の場合はいきまなくても出てしまいます。
日常生活に支障が出るので、多くの方が手術を希望します。 直腸脱を治すと便漏れも改善します。
Q:寝ているときに、ときどき肛門痛が起こります。30分程度で治まるのですが、原因と対策を教えてください。(75歳男性)
夜寝ているときなどを中心に一瞬、あるいは数分から30分だけ直腸、肛門付近に起きる突発的な痛みを「消散性直腸肛門痛」といいます。
はっきりした原因はわかっていませんが、肛門周囲の筋肉がけいれんを起こすのが原因ではないかと考えられています。
残念ながら、対処法として鎮痛剤などの対処療法しかありません。 時間がたつと消える痛みなので、消えるまで鎮痛剤で様子をみることが多いです。
検査するとしたら、内視鏡やMRIで直腸に腫瘍や炎症の可能性があり精密検査をお薦めしますが、消散性直腸肛門痛のように「突発的ですぐに消える痛み」はそれほど心配しなくてもいいでしょう。
雑誌、日経ヘルスより引用
ブログ作者の感想
便秘や軟便はホントつらいですよね。切れ痔やいぼ痔も不快にさせます。お尻に関する悩みは人に言えないけど各自様々抱えています。快便や痔のない快適な日々を過ごせるように、食事や、運動、適時に薬を使っていきたいですね。
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