サルコペニアについて。老化！筋肉が衰えると。

サルコペニアとは？

東京女子医科大学　若林秀隆教授。

筋肉では、古いものが壊される「分解」と、新しいものがつくられる「合成」が常に繰り返されています。

しかし、加齢や運動不足などが続くと、筋肉の分解が合成を上回り、筋肉の量や質が低下してしまいます。このような状態を「サルコペニア」といいます。

高齢者では一般に、下半身の筋肉から減少するためサルコペニアがあると、歩く速度が遅くなったり、入浴やトイレなどの動作がしづらくなったりします。

また、体のバランスを保つ機能が低下し、転倒や骨折のリスクが高まります。

筋肉は、動かすことで筋肉量が増えて大きくなります。逆に、運動不足になると筋肉量が減少し、筋肉が低下してしまいます。

運動をして質の良い筋肉をつくるには、食事も大切です。 十分な栄養をとらずに運動をすると、かえって筋肉が細くなることがわかっています。

サルコペニアの診断

サルコペニアの診断には、アジアの診断基準である「AWGS2019」が用いられます。 まずは「筋力と「身体機能」を調べ、どちらか一つでも低下している場合は、筋肉量を測定します。

サルコペニアのセルフチェック

サルコペニアのセルフチェックとしては、「指輪っかテスト」や「5回いす立ち上がりテスト」があります。

「指輪っかテスト」

➀いすに座り、しっかりと両足を床につける。

➁前かがみになり、利き足ではないほうのふくらはぎのいちばん太いところを、両手の親指と人差し指でつくった輪っかで囲む。利き足がわからない場合は、両脚のふくらはぎで行う。

診断：

囲めない、指先どうしがつかない。→　サルコペニアの可能性はほとんどない。

指先どうしがつく。→　サルコペニアの可能性は2.4倍

左右の指が重なる。→　サルコペニアの可能性は6.6倍

「5回いす立ち上がりテスト」

➀いすに座り、両腕は胸の前で組む。

➁できるだけ速く、立ったり座ったりを5回繰り返す。 12秒以上かかる場合は、身体機能が低下しており、サルコペニアの可能性がある。

サルコペニアによって起こりやすい病気

感染症：

栄養状態が悪くなると免疫細胞の１つであるリンパ球が減少して、免疫の働きが低下し、感染症が起こりやすくなります。

肺炎：

サルコペニアによってむせやすくなったり、痰をうまく排出できなくなったりして、肺炎が起こりやすくなります。

糖尿病：

筋肉量が減ってしまうと、筋肉に糖を蓄えにくくなり、血液中の糖が増えます。 その結果、血糖値が高くなりやすく、変動しやすくなり、糖尿病を発生するリスクが高まります。

タンパク質をしっかりとる。

効率よく筋肉量を増やすには、適度な運動とともに十分な栄養を取ることが必要です。

特に、筋肉の材料となるタンパク質をしっかりとることが重要です。 サルコペニアがある人は、タンパク質を健康な成人の１．２倍～１．５倍とるといいでしょう。

肉や魚、牛乳などに多く含まれている動物性たんぱく質は、吸収が良く、体内で筋肉の材料として効率よく利用されます。ただし、脂質が比較的多いため、取りすぎには注意が必要です。

植物性たんぱく質を多く含む豆類などは、動物性たんぱく質を多く含む食品に比べ、エネルギー量が抑えられるため、量をしっかりとることができます。 動物性たんぱく質と植物性たんぱく質はバランスよくとることが大切です。

肉や魚の主菜を1日に2回、そのほかに、チーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、豆腐、納豆、卵などを加えることで、適量のたんぱく質をとることができます。

また、たんぱく質は、ビタミンＤと一緒にとることで、効率的に筋肉量を増やすことができます。 ビタミンＤは、魚やキノコ類などに多く含まれます。

きょうの健康より引用