男性型脱毛症について

男性型脱毛症、内服薬で5年後に差をつける

薄毛に悩む男性の約8割は「男性型脱毛症（AGA）」といわれ、全国に1200万人以上と推定されている。AGAは主に男性ホルモンの影響を受けて発症するが、中には病気が潜んでいる可能性もある。

日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」の作成に携わり、脱毛研究・治療の第一人者として知られる米元皮膚科医院の斎藤医師はこう述べる。

「数日続いて抜けたぐらいで大騒ぎ大騒ぎする必要はありません。しかし、明らかに薄くなってきたと感じたら、本当にAGAなのか診断を受けましょう。円形脱毛症のように見た目は似ていても治療薬が異なるものもありますし、甲状腺などの内臓の病気が潜んでいる可能性もあります。」

医師にAGAと診断されたらどのような治療法があるのだろうか。50万人のAGA治療実績があるDクリニック東京院長の小林医師は言う。

「国内で発毛効果が承認されている唯一の薬がミノキシジル。私はミノキシジルの外用剤より、内服薬であるフィナステリドやデュタステリドのほうが発毛効果が高いと感じています。ミノキシジルの外用剤、内服薬のフィナステリドなどを単剤ではなく、その人に合わせて組み合わせて使うと、約8割の人に何らかの反応がみられます。」

フィナステリドはもともと前立腺肥大の治療薬として認可され、日本では2005年にAGA治療薬として発売された。日本で行われた治験ではフィナステリドを毎日12か月間服用した群で脱毛量の減少が明らかであった。

斎藤医師は言う。「現状をキープする薬と考えるといい。すごく薄くなった人が元に戻るわけではありませんが、服薬した場合としてないとでは5年後に大きな差がつきます。抜け毛の進行が止まるというのも、十分な薬の効果です。」

　　　　

薄毛のメカニズム

ここでなぜ薄毛になるのか、というメカニズムについて考えてみます。 髪の毛は成長期（4～6年）→退行期（2～3週間）→休止期・脱毛（3ヶ月）を経て再び成長期に戻るというサイクルを繰り返します。休止期になると毛根の深さが浅くなり、新しい髪の毛に押し出されるようにして髪の毛は抜けていく。

小林医師は言う。「通常なら4～6年の成長期がAGAによって短くなると、毛髪が十分に成長する時間的な余裕がなくなり、毛根も太く深くならないうちに休止期に入り、抜け落ちてしまいます。成長が不十分で萎縮した毛根から新たに生えてくる毛は、さらに細く柔らかく短い毛に。毛根はみるみる萎縮し、悪循環になります。」

発毛を邪魔する男性ホルモン：5αリダクターゼ

さらに小林医師は言う。「男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、最も分泌量が多いのがテストステロンで男性ホルモンの90%を占めます。年を取るとこのテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によって、ジヒドロテストステロンというより強い作用をもつ男性ホルモンに変身します。ジヒドロテストステロンが髪の毛に作用すると、発毛の司令塔を萎縮させて発育を邪魔することがわかっています。」

内服薬のフィナステリドやデュタステリドはホルモンの変身に関わる酵素5αリダクターゼの働きをブロックすることでAGAの進行を抑制する仕組みです。一方、ミノキシジルは頭皮の血流を改善して毛髪を作る毛母細胞自体を活性化し、発毛を促進するといわれている。

雑誌プレジデント、「あなたVS薄毛」より引用