エビデンスの信用度
カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教で医療政策学者、医師で「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の著者である津川友介氏は以下のように言及します。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がきっかけとなったのか、日常生活で免疫力を高め、感染症を予防する方法にも、人々の関心が集まっています。
そんな中でテレビやインターネットを中心に広まっているのが「免疫力アップや感染症予防に役立つ食品」の情報。
しかし、それらの中で、エビデンス(科学的根拠)に基づいて、免疫力アップや感染症予防の効果がはっきりと認められている食品は、残念ながら、皆無に等しいのが現状です。
では、科学的な研究方法とは何でしょうか。医学では、研究方法によってその内容のエビデンスのレベル、すなわち、信用度も決められています。
人体への効果におけるエビデンスのレベル
まず、試験管での実験や動物実験のデーターは、論外です。 そもそも人体への効果など、わかるはずもありません。
人間を対象とした研究でも、個人の体験談やエビデンスに基づかない研究者の個人的見解は、エビデンスのレベルが最も低いデーターといえます。
観察研究は個人の体験談やエビデンスよりもレベルが高く、統計学的な検証に値します。 特定の人間集団を一定期間追跡してデータを抽出し、健康に対する効果を分析します。
例えば、東京都民の中から、納豆をたくさん食べていた人とほとんど食べなかった人を選び、10年後の死亡率を調査するといった方法です。
ただし、納豆をたくさん食べていた人と、ほとんど食べてなかった人は、その他の健康習慣も違う可能性があります。できる範囲でそれらの影響を統計的手法を用いて取り除きますが、完璧には取り除くことはできません。
そこででてくるのが、観察研究よりもエビデンスが強いランダム化比較試験です。
これは、人間集団をくじ引きのような方法を用いて無作為に同質的なグループに分け、それぞれに決まった行動をとってもらい、その結果を追跡します。
例えば、40歳の1万人を5000人ずつ、納豆を毎日1パック食べるグループと全く食べないグループに分け、10年後の死亡率を比べたりする方法。
2つのグループの間で納豆を食べる習慣以外の条件がほぼ同じであるため、納豆そのものの健康への影響をきちんと評価することができます。
最強のエビデンス、メタアナリシス
そして、ランダム化比較試験を上回る最強のエビデンスとなるのが、複数のランダム化比較試験を統合解析した「メタアナリシス」。
解析する研究データが多ければ多いほど、エビデンスは強くなるのです。そこで、健康効果について現在、研究結果が出ている食品のうち、エビデンスのレベルによって、5種類にグループ分けしたのが下記の表です。
注:「健康」は病気になるリスクや死亡率のことを意味している。「茶色い炭水化物」とは精製されていない炭水化物。「白い炭水化物」とは精製された炭水化物のことを指す。グループ1の他の食品よりはエビデンスが弱いもの、豆類もグループ1に含めてよいと考えられる。
グループ 説明 食品の例 グループ1
〇健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品 魚、野菜と果物、茶色い炭水化物(玄米など)、オリーブオイル、ナッツ類 グループ2
〇?ひょっとしたら健康に良いかもしれない食品。少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている ダークチョコレート、コーヒー、納豆、ヨーグルト、酢、豆乳、お茶 グループ3
?健康へのメリットもデメリットも報告されてない食品 その他の多くの食品 グループ4
✖?ひょっとしたら健康に悪いかもしれない食品。少数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている。 マヨネーズ、マーガリン(トランス脂肪酸を含むものはグループ5) グループ5
✖健康に悪いという複数の信頼できる研究で報告されている食品 赤い肉(牛肉や豚肉)と加工肉(ハムやソーセージ)、白い炭水化物、バターなどの飽和脂肪酸
雑誌プレジデント、「健康に良いもの、悪いもの丸わかり」より引用
ブログ作者の感想
エビデンスでのレベルについて知ることができました。うわさや迷信などに惑わされず、エビデンスのレベルが高いものが信用できますからね。毎日の食卓、口にするものはなるべくエビデンスでの評価が高いものを選ぶのが必要ですね。