趣味と要介護認知症との関連について

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクトより引用

趣味を持つ人では認知症の罹患リスクが低い

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。

平成5年から6年(1993年から1994年)に茨城県水戸、高知県中央東の2保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった40歳から69歳の男女のうち、アンケート調査に回答し、脳卒中の既往がない22,377人の方々を平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、趣味と介護保険認定情報から把握した認知症(以下、認知症)との関連を調べました。

その結果を専門誌で論文発表しましたのでご紹介します(J Epidemiol. 2022年5月Web先行公開)。

趣味は「余暇時間に行う楽しむことを目的とした活動」であり、これまでにも趣味の活動が認知症の罹患リスクの低下と関係するという報告がありました。

しかし、趣味と認知症の罹患リスクの関連について調べた先行研究は、65歳以上を対象とし、かつ追跡期間が短いことから、趣味を持たないことで認知症となるのではなく、認知症や認知機能低下の症状の一つとして趣味を持つことができない状態になっている(因果の逆転が生じている)ために、趣味を持たないことが、見かけ上のリスクとなっている可能性がありました。

因果の逆転の影響を小さくし、趣味と認知症との関連を調べるためには、大多数が正常な認知機能を保っていると考えられる中年期(40歳から64歳)を対象とすることや、長期間追跡することが重要です。

そこで私たちは、主に中年期の男女を対象として開始した多目的コホート研究において、趣味とその後の認知症罹患リスクとの関連を調べました。

調査方法

1993年から1994年に実施したアンケート調査における「趣味はありますか?」という質問の回答から、対象者を「ない」、「ある」、「たくさんある」の3つのグループに分け、「ない」と回答したグループと比べた場合の、他のグループのその後の認知症の罹患リスクを調べました。

また、認知症と診断される前の脳卒中既往の有無から、脳卒中既往のない認知症と脳卒中既往のある認知症に分けた解析も行いました。解析にあたって、アンケート回答時の年齢、性別、地域、体格、喫煙習慣、飲酒習慣、身体活動量、既往歴(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、独居の有無、仕事の有無、自覚的ストレス、タイプ A行動パターン(注1)、友人の数(注2)を統計学的に調整し、これらの要因による影響をできるだけ取り除きました。


注1:タイプA行動パターン=せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的などの行動パターン
注2:友人の数=週に1回以上話し合う友人の数

調査結果

2006年から2016年までの追跡期間中に、3,095人が認知症と診断されました。解析の結果、趣味がない人と比較して、趣味がある人では18%、趣味がたくさんある人では22%、統計学的有意に認知症の罹患リスクが低いことが明らかになりました。アンケート回答時の年齢層を中年期(40-64歳)とそれ以上(65-69歳)で分けた場合、いずれの年齢層でも趣味を持つ人では認知症の罹患リスクが統計学的有意に低いという結果でした。 (図1)。

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図1.趣味と認知症の罹患リスクとの関連

趣味があると、特に脳卒中既往のない認知症の罹患リスクが低い

2006年から2012年までの追跡期間中に、1,333人が脳卒中既往のない認知症、466人が脳卒中既往のある認知症となりました。趣味がない人と比較して、趣味がある人、趣味がたくさんある人では、脳卒中既往のない認知症の罹患リスクが23%、統計学的有意に低いことが明らかになりました。一方で、趣味と脳卒中既往のある認知症との間には統計学的に明らかな関連はみられませんでした(図2)。

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図2.趣味と認知症(病型別)の罹患リスクとの関連

まとめ

今回の研究の結果、趣味を持つことは認知症、特に脳卒中既往のない認知症の罹患リスクを低下させる可能性が示されました。


これまでにアメリカや日本において、65歳以上の高齢者を対象とした短期間追跡による研究でも、趣味に取り組む時間が長い人やグラウンド・ゴルフ(注3)や旅行などを趣味にしている人では、認知症の罹患リスクが低いことが報告されています。今回の研究では、主に中年期人口を対象とした集団でも、同様の結果が得られました。


注3:「スタートマット」から「ホールポスト」までの打数を競うスポーツ。一般のグラウンドや広場などに自由にコースを設置できる。

脳卒中既往のない認知症の多くは、アルツハイマー型認知症であると考えられます。これまで、多くの研究で、知的活動に取り組む人はアルツハイマー型認知症の罹患リスクが低いこと、身体活動に取り組む人は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症、脳血管疾患を伴う認知症、混合型認知症の罹患リスクが低いことが報告されています。

これまでの研究で、楽しい余暇活動と生きがいとの間に関連があること、生きがいを持つ人ではアルツハイマー型認知症の罹患リスクが低いことが報告されており、趣味を通して生きがいをもつことで、認知症の発症予防につながっていることが考えられます。

趣味への取り組みを通した知的活動、あるいは身体活動が、アミロイドβの蓄積や炎症反応、灰白質(神経細胞が集まっている領域)の萎縮を抑制したり、高血圧や糖尿病、肥満といった認知症の罹患リスクを低下させたりすることで、認知症の予防につながると考えられます。

今回の研究の限界として教育歴や精神疾患、向精神薬の服薬の有無といった認知症に関係する要因の影響を考慮することができなかったことや、趣味の数や種類、頻度と認知症の罹患リスクとの関連を調べることができていないことが挙げられ、今後さらなる研究が必要です。

ブログ作者の感想

やはり趣味を持つことは認知症予防に効果がありそうなのを知りました。ウオーキング一つでもあれば、運動不足解消にもなり、しいては肥満などの予防にもつながります。興味あることにどんどん挑戦して、多趣味に生きたいですね。その方が人生楽しそう。

私は40代からプログラミングを始めました、知的な趣味であり、けっこう認知症予防に効果を発揮しているかもしれません。ブログも開設し(https://www.ittokenkou.com)、これからも学んだことを死ぬまで掲載していきたいと思います。

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