国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクトより引用
女性において毎日の生活が不規則であると循環器疾患のリスクが高い
男性では、野菜・果物摂取量が少なく、かつ毎日の生活が不規則である場合に全循環器疾患のリスクが高い
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古(呼称は2019年現在)の9保健所管内にお住まいだった40~69歳の方々のうち、
調査開始から5年後に行ったアンケート調査に回答いただき、かつ、その時点で循環器疾患、がんの既往歴のない約7万8千人の方々を追跡した調査結果にもとづいて、毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたのでご紹介します(Sci Rep. 2022年9月公開)。
24時間体制のサービスが求められる社会においては、体内時計が刻む生体リズム(概日リズム)や、明暗サイクル、睡眠や食事といった生活リズム、仕事や学業といった社会生活などとの間にずれが生じ、健康上の悪影響を生じる可能性が報告されています。
特に、夜勤を含む交代制勤務に従事する人では、昼夜逆転の生活によって概日リズムと生活リズムとの間に極端なずれが生じ、循環器疾患をはじめ各種の疾患リスクが高いことが複数の研究で報告されています。
日々の睡眠時間や就寝時刻にばらつきが大きいほど、循環器疾患のリスクが高い
普段の生活が不規則であると回答する人々では、睡眠や食事を含む生活リズムが不安定であることが報告されており、夜勤等による昼夜逆転生活の状態ほどではありませんが、概日リズムにずれが生じている可能性があります。
しかしながら、睡眠に限定せず、毎日の生活の不規則さを評価し、循環器疾患との関連を検討した報告はありませんでした。そこで、私たちは毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連を調べました。
さらに、様々な理由から毎日の生活を規則的にすることが難しい人々もいることから、自分で変えることのできる日常生活のうち、比較的変化させやすいと考えられる食事によって生活の不規則さの影響が異なるかについても注目しました。
循環器疾患における野菜・果物の摂取量の関係
食事の中でも、特に野菜や果物の摂取は循環器疾患のリスクと関連があることが報告されていることから、今回の研究では、毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連が、野菜・果物の摂取量によって異なるかどうかについても検討しました。
本研究では、研究開始から5年後に行った日常生活に関するアンケートにおける、「あなたの毎日の生活は規則正しいですか?」という質問の回答から、対象者を「規則的」、「不規則」の2つのグループに分け、
「規則的」と回答したグループを基準にした場合の、「不規則である」と回答したグループのその後の循環器疾患発症のハザード比を算出しました。
また、野菜・果物の摂取量を加味した分析では、野菜・果物の摂取量によって対象者の人数が均等になるように2つのグループに分け、「野菜・果物摂取量が多い」グループ、「野菜・果物摂取量が少ないグループ」に分類しました。
分析にあたって、年齢、調査地区、同居の有無、飲酒状況、喫煙状況、ストレス、労働時間、職種、朝食摂取頻度、睡眠時間、体格指数(body mass index: BMI)、身体活動量、食事摂取量(総エネルギー、野菜、果物、魚類、肉類、ナトリウム)の影響を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除きました。
女性において毎日の生活が不規則であると循環器疾患のリスクが高い
毎日の生活の不規則さと循環器疾患について
アンケート調査の結果、参加者のうち23.7%が、自分の毎日の生活が不規則であると回答しました。また、約13.3年間の追跡期間の間に、4641名の者が循環器疾患を発症しました。
男性では、毎日の生活の不規則さと循環器疾患の発症との間に統計学的有意な関連はみられませんでしたが、女性においては、毎日の生活が規則的であると回答したグループと比較して、
不規則と回答した女性のグループのハザード比(95%信頼区間)は、全循環器疾患では1.24(1.11–1.39)、脳卒中では1.21(1.07–1.36)、虚血性心疾患では1.49(1.11–2.00)であり、毎日の生活の不規則さと循環器疾患との間に統計学的に有意な正の関連がみられました。
また、循環器疾患を発症したことにより、毎日の生活の規則性が変化することの影響を除くために、調査開始後3年以内の発症を除外した解析も行いましたが、結果は変わりませんでした。
毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連
野菜・果物摂取量別の関連性について
毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連について、野菜・果物摂取量によって対象者を分けたうえで解析を行ったところ、男性では、野菜・果物摂取量が少なく、かつ毎日の生活が不規則である場合に全循環器疾患のリスクが高いという結果が得られました。
一方、女性においても、野菜・果物摂取量が少なく、かつ毎日の生活が不規則であると全循環器疾患・脳卒中のリスクが高いという結果が得られました。さらに、男性では、不規則な生活と野菜・果物摂取量の間に、有意な交互作用もみられました。
毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連:野菜・果物摂取量による層別化
この研究結果よりみえてきたこと
本研究の結果から、女性では毎日の生活が不規則であると、循環器疾患のリスクが増加することが示されました。また、野菜および果物の摂取量で対象者を分けた場合、野菜・果物摂取量の少ない男性では全循環器疾患の、女性では全循環器疾患および脳卒中のリスクが高いことがわかりました。
毎日の生活が不規則であると回答した方の特性から、日々の睡眠や食事といった生活のリズムが、概日リズムとずれてしまっていると想定されます。
先行研究では、活動や休息のリズムが不規則であることが、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症と関連することや、1週間の就寝時刻や睡眠時間のばらつきが大きいほど循環器疾患のリスクが高いことが示されています。
このメカニズムは十分に解明されていませんが、概日リズムと日々の生活リズムのずれにより、血圧、LDLコレステロール、中性脂肪、空腹時のインスリン濃度、インスリン抵抗性、さらには炎症性マーカーの指標が上昇あるいは増加することが実験的な研究で報告されています。
そのため、毎日の生活を規則的にすることでこれらの増加が抑えられ、循環器疾患に対して予防的に働く可能性が考えられます。
また、ほかの研究で、野菜・果物を多く摂取するグループでは炎症性マーカーの指標が低いことが報告されており、炎症性マーカーが低い人では循環器疾患のリスクが低いことも報告されています。
これらの報告から、野菜・果物を多く摂るグループでは、毎日の生活が不規則であることと循環器疾患との関連性が弱まった可能性が考えられます。
一方、今回の研究では追跡期間中に起こりうる毎日の生活の不規則さの変化は考慮できていません。
また、今回用いた毎日の生活の不規則さの把握方法は、あくまでも自己申告によるもので、妥当性が十分に確認されたものではありませんでした。
毎日の生活の規則性の構成要素(睡眠、食事、および社会生活など)は人によって異なることが予想されるため、この複合的な指標に関する更なる知見の蓄積が必要であると考えられます。
さらに、解析では関係する要因を可能な限り統計学的に取り除いて解析しましたが、交代制勤務や夜勤といった状況等を十分に考慮に入れることができず、未測定の交絡因子の影響を除き切れていない可能性があります。今回の結果を確かめるにはさらなる研究が必要です。
遅い時間に食べると空腹感が増し、エネルギー消費は減る
遅い時間に食事をすると、空腹感が増し、エネルギー消費量が減ることを、米国の研究チームが明らかにした。
試験には肥満の男女16人が参加した。平均年齢が37.3歳、BMIの平均は28.7。
参加者は実験室に6日間滞在し、早い時間に食事をとる「早い食事」の試験、遅い時間に食事を取る「遅い時間」の試験をそれぞれ3~12週間あけて行った。
7時に起床した場合、早い食事では8時、12時10分、16時20分。
遅い食事では12時10分、16時20分、20時30分に食事をした。
どちらの試験でも毎日の摂取カロリーは同じだった。その結果、遅い食事では早い食事の場合に比べて、空腹感は2倍に増え、特に起床後の空腹感は増加。
また遅い食事では食欲を抑えるホルモン(レプチン)が早い食事より減っていた。反対に起床後の食欲ホルモン(グレリン)が増えた。
日中のエネルギー消費量は遅い食事では優位に減っていた。尚、睡眠時間はどちらの食事でも7時間ほどで変わらなかった。
さらに、同意を得たうえで参加者の腹部の皮下脂肪組織を取って解析。遅い食事では脂肪分解に関わる遺伝子の発現が減少し、脂質合成に関わる遺伝子の発現が増加していた。
このため遅い食事は脂肪が蓄積し、肥満リスクを高める可能性があるとしている。
ブログ作者の感想
約7万人を13年間にわたって追跡調査したみたいで、信ぴょう性があると思えました。特に女性は生活が不規則だと循環器疾患のリスクが高いそうですね。男性より野菜を多めにとって、健康に気を付けてもらいたいものですね。