昭和大学 教授 岩波 昭 ・東京大学医学部卒業。専門は精神生理学、特に発達障害の診断・治療
忘れ物・ケアレスミス ADHDの特徴と対策
注意力や集中力の欠如がみられる「ADHD」
発達障害とは、生まれもった行動や思考の「特性」であり、その特性は病気でなく、個性や性格に近いものと考えられています。成人の3~4%が該当するともいうADHD(注意欠如・多動症)は発達障害の一つです。
「不注意」「多動性・衝動性」という特性から、仕事で困ることが起こりやすくなります。
職場で困難に直面して初めて気づく人もいる。
ADHDは、子供のころには特性が目立たず、大人になってから職場などで困難に直面することで、初めて気づくケースが多く見られます。特性のために起こるトラブルで叱責されることが続くと、うつ病を発症しても、発達障害が原因だとわかっていないと、うつ病の改善は難しくなります。
仕事で困りがちなこと
ADHDの人は仕事で以下のような問題が起こりやすい。
しゃべり過ぎたり、感情的になりやすい。
話の要点がずれているのに気付かずにしゃべり続ける。また、話しているうちに過度に感情的になりことがある。
同時進行が苦手。
複数の仕事を、段取りを組んで同時に進めることが難しい。優先順位をつけて整理することができずに、期限を守れない。
ケアレスミスが多い。
不注意という特性が「書類をなくす」「指示を忘れる」「入力ミスをする」などのケアレスミスとして現れる。
診断に結びつけるためには。
子供のころの行動を思い出すことは、ADHDに気づくきっかけになります。学校の通知表の備考欄などの記載も有用な情報です。
仕事や日常生活がうまくいかず、「自分はADHDかもしれない」と思ったり、周囲の人に言われたら、できるだけはやく専門の医療機関を受診してみましょう。
ADHDに該当しなくても、ADHDの特性を多少もっている人はいます。どれだけ仕事や日常生活に支障がでているかが診断のポイントになります。
薬と日常の工夫で仕事や生活がしやすくなる。
ADHDへの対策:特性によるミスを未然に防ぐためにできることの具体例
忘れ物防止:忘れない、なくさないための対策をとる。
忘れ物防止タグですぐに発見
財布など大切なものに、「忘れ物防止タグ」を付ける。見失った時には、音で知らせてくれたりする。下記ご参考までに。
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仕事のミス防止
タイマーで15分ごとに区切る
ある仕事をしている最中に、別の仕事にとりかかって元の仕事を忘れてしまっても、タイマーが鳴ることで思い出せる。
書類をデータ化
紙の書類や名刺はなくさないように、すべてデータ化してパソコンなどに保存する
人に伝えることは、見えるところにメモして貼る
誰かに伝えなければならないことは、すぐに付箋にメモして目につくところに貼っておく。
聞いたことはすべてメモを取る。
指示やよく会う人の名前、備品の場所など何でもメモをとる。メモはいつでも見れるようにポケットに入れておく。
薬で不注意や衝動性を一時的に抑える
薬でADHDを根本的に治すものではありませんが、不注意や衝動性を一時的にコントロールし、生活上の困難を軽減する効果が期待できます。成人用の薬には「メチルフェニデート徐放錠」「アトモキセチン」「グアンファシン」の3つがあります。いずれも脳内の神経伝達物質を調整する働きをもちます。
効果の現れ方には個人差がありますが、「薬を飲むと、考えが落ち着く」「細かいことができ、段取りを組めるようになる」などと感じられるようです。ただし、「吐き気、眠気、頭痛」などの副作用が起こることもあります。効果と副作用をみながら、量を調整していきます。
特性に合わせた仕事の仕方を考える
もう一つの重要な対策は、自分の特性をしっかり理解して受け入れることです。そして、特性に応じて生活や仕事のしかたを工夫するようにします。
苦手なことを上手に補えれば生活がしやすく、仕事もスムーズに進むようになり、自信を取り戻すことにつながります。また発達障害のある人は、睡眠や生活のリズムが崩れやすいので、規則正しい生活を送ることも大切です。
周囲ができるサポートとは。
変えようとしても、できないから悩む。
発達障害は病気ではなく、生まれつきの特性です。ADHDは「注意力や集中力に欠ける」「落ち着きがない」などの特性があります。
こうした特性から仕事でトラブルが起こることは少なくありません。そのため、職場や家庭などで、周囲の人が戸惑うケースも多く見られます。しかし、発達障害による特性は、本人の努力で変えることはできません。変えることができながゆえに、本人も苦しんでいます。
まずは、周囲の人が、発達障害の特性を正しく理解することが、サポートの第一歩になります。
非難は自信を奪ってしまう。
発達障害の特性からトラブルが起こったとき、周囲はつい「なぜ?」と問いただしたり、非難したりしてしまういがちです。しかし、本人もその理由がわからないため答えることは困難です。「なんでできないの?」「怠けているんじゃないの?」などと言っても解決につながらず、本人の自信が失われるばかりです。
重要なことは繰り返し伝える
締め切りや約束など、忘れると困ることや重要なことは、一度だけでなく、繰り返し伝える
1つずつ順番に頼む
同時に多くのことをするのが苦手なため、一度に多くのことを頼まず、1つずつ順番に頼むようにする。
指示は文書化する
聞いたことを忘れやすいため、メールやメモなどで指示を文書にしておくと、お互い安心できる。
家庭でできること
- 明日は何があるのか、何をもっていくべきか、一緒に確認する。
- 食事や入浴などのときに、声をかける
スケジュールや持ち物の管理が苦手なため、前日までに確認しよう。また没頭すると日常的なことがおろそかになったり、買い物やアルコールなどへの依存症につながることもあるので注意する。
特性を生かせる仕事もある
発達障害の人では、特性に合った職種や仕事をえらぶことも大事です。ADHDの人は「好奇心が強い」「想像力がある」「フットワークが軽い」などの特性があります。このためクリエイティブな仕事や営業の仕事に向いています。反対に事務などの長時間同じ作業をする仕事にはあまり向いていません。
悩みを聞くだけではなく、就労支援も行う「発達障害者支援センター」もご参考までに。
境界性パーソナリティー障害
感情の波や対人関係が不安定になりやすく、日常生活に支障をきたします。ADHDなどの発達障害によく似た症状が現れるため、識別が難しい。発達障害を併せ持つ場合もある。
発達障害と障害者手帳
発達障害で初診日から6ヶ月以上経過している人は、「精神障害者保健福祉手帳」の交付対象となる。この手帳があると、住民税・所得税の一部控除やさまざまな福祉サービスが受けられるほか、障害者雇用の適用対象にもなる。家族や医療機関関係者が代理で申請することもできる。
発達障害と遺伝的要因
発達障害と遺伝的要因は一定程度関連があるとされており、一卵性双生児のうち一人が発達障害だと、もう一人も発達障害である確率は70%程度という報告もあります。一般的な兄弟姉妹だと20%程度。
しかし、発達障害に関係する遺伝子は数多くあります。どんな人でもその遺伝子のいくつかを持っている可能性があり、特性が強いか弱いかの個人差にすぎないともいえます。
親の病気や生活習慣と子供の発達障害に関係に関する研究もありますが、はっきりしないことも多くあります。
発達障害と育て方は関係ない
発達障害は生まれながらの特性であり、育て方が原因ではありません。愛情不足や不適切なしつけのせいというのは大きな誤解。ただ、本人が周囲の助けを借りながらも、自力で問題を解決していくことは、自信を育て、生きやすさにつながります。
「きょうの健康」より引用
ブログ作者の感想
まったくADHDについて知りませんでした。もっとADHDの人の特徴を理解して、温かい言動を心がけることが必要だと思いました。長所と短所は表裏一体なので、その人の特性を生かすために周りのサポートが必要だと思いました。