不安を乗り越える方法

精神科医、医学博士の岡田尊司の著書「社交不安障害 著者 岡田尊司」をふと本屋で目にして読みました。私の小学生の子供も最近、食べ物がのどにつまる不安、学校へ行く際の様々な不安を抱えていた時期でもあったので、参考になればと思って衝動買い。

実践してうまくいったこともあるのでこのブログを見てくださった皆様にも少しでも参考になればと思い掲載しました。

認知行動療法

認知療法は、うつ病の治療として最初に発展したが、その後、不安障害にも有効であることがわかり、適用範囲が広げられてきた。認知とは物事の受け取り方のこと。社会不安障害の人は他者に良い印象を与えなければならないという思い込みにとらわれているとされる。

緊張せずに、面白く、魅力的に話し、完璧で、みんなから好かれなければならないという基準を、知らず知らず自分に課している。ところが、その基準にとらわれればとらわれるほど、失敗したらどうしようという不安を強めてしまうことになる。

不安を超越する思考

不安を超越する思考とは、不安になるとかならないとか、うまくいくとかいかないとかといったことの成否ではなく、もっと自分が大切にすることに価値を置く考え方のこと。

「不安になろうがなるまいが、~しよう」「うまくいこうがいくまいが、~しよう」「何が起きようが、~するだけだ」という形で語られる。この考え方によって、不安を超越することができる。成功か失敗かという「とらわれ」から自由になることができる。そして、自分が本当に大切にする信念や方針を語り、そこを大事にする。

根拠ある合理的思考

これは、自分が不安に思っていることが、現実的ではないことを、根拠をもって打ち消したり、根拠を挙げて、自信を裏付ける考え方。「~なので、心配する必要はない」「~なので、自信をもって~するだけだ」という形で語られる。

思考記録・練習例

日時状況・反応不安を引き起こす思考不安レベル不安を超越する思考・根拠ある合理的思考不安レベル
1/13会議でプレゼンの時間が近いことを意識すると、全身が緊張し、胃がいたくなった。・緊張してうまくしゃべれないかも。
・説明を求められても緊張してうまく答えられないかも。
・絶対うまくいかないだろう。
90/100・緊張してもいいから、準備したことを出し尽くそう。
・十分準備したから、自信をもって答えればいい。
・うまくいくかいかないかよりも、自分なりに最善を尽くそう。
60/100
2/10提案した企画について、A部長は評価してくれたが、経理部長が細かい数字の不備を指摘し、A部長の顔が厳しくなった。想定外の事態に頭が真っ白になりそうだった。・A部長の機嫌が悪くなり、しかられるに違いない。
・数字が間違っていたのでは信用してもらえない。
・もう最低の評価だろう。
90/100・A部長が評価してくれたことに自信をもとう。
・細かな数字のミスは、本質的な問題ではないので、企画の価値自体の否定ではない。
・数字の不備はお詫びしつつ、企画の意義について協調しよう。
70/100

悪循環サイクルから好循環サイクルへ

悪循環サイクル

失敗の恐怖 → 回避 → 苦手意識の固定化 → 自信・スキルの低下 → 失敗体験 →   失敗の恐怖

好循環サイクル

チャレンジ → 慣れによる恐怖の軽減 → スキルの改善 → 成功体験と自信の回復 → 主体的意欲の回復 → チャレンジ

人間はどんなことにも慣れる力をもっている。不安や恐怖を取り除くためにもっとも有効なのは、実際に行動して、恐れていることに慣れてしまうこと。最初は苦労してでも、やりこなせる経験を積んでいくと、不安や恐怖は大幅に減っていくのです。

悪循環を逆転させるには、回避をやめ、苦手な状況に飛び込んでいくしかない。そうした方法は暴露療法と呼ばれ、現在のところ、社交不安障害のもっとも効果的な治療法である。

小さなステップに分けて進む

この回復のプロセスがうまく進んでいくためのポイントは、少し努力すれば達成可能な課題を設定し、チャレンジするということです。成功確率が低い無理なチャレンジでは長続きしません。また手痛い失敗をして、よけいに自信をなくしてしまう危険もある。

アルバート・エリスの場合

心理療法家のアルバイト・エリスは、人前でしゃべるのが大の苦手で、そのことで悩んでいた。話そうとすると声が震え、頭が真っ白になってしまっていた。エリスは、人前でしゃべることを避けるようになっていたが、あるとき、一念発起して、自分にある日課を与えることにした。

それは、公園のベンチにかけている女性に、毎日話しかけるというものだった。のべ130人に声をかけたが、そのうち30人くらいはエリスを無視して立ち上がり去っていった。あとの100人は、話の相手をしてくれた。そうした訓練を積んだ結果、エリスは、まったく緊張せずに人前でも話せるようになった。エリス自身はこう述べている。

「この訓練中に、誰も吐きもしなければ、警察を呼ぶこともなかったし、私が死ぬわけでもなかった。私の想像の中で恐れていたことではなく、現実に起こることを実際に試してみて、納得することで、私は女性に話しかけることに対する恐怖心を克服したのである」

暴露療法

あなたが苦手とする度合いの強い状況から弱い状況まで、順番に並べた一覧表を作る。これは段階的に暴露療法のプロセスを進めていくときに上っていく階段のようなもの。

順番具体的な行動恐怖レベル
大きな行事でスピーチ100
役員の前でプレゼン90
顧客の前でプレゼン70
会議で発言50
会議に出席40
初対面の顧客と面談する30
7顧客と電話で話す20

40未満の評定のものが多くなっても、実際のトレーニングにはあまり活用できない。というのも、多少緊張はあっても、大きな困難があるほとではないので、苦手を克服することには適さないため。一応リストアップしたうえで、40以上のものが、豊富に揃うようにするといい。

これをもとに、その人にとって苦手であるけど、努力すればどうにかできる行動を選んで、それを繰り返し実践していく。

「顧客の前でプレゼンする」については、そんなに多くは実践できないので練習として家族、同僚の前で週に2,3回くらいして慣れさせることが効果的。プレゼンを月に1回行うと緊張してしまうが、週に3回行っていれば「慣れ」が起き、平気になりやすい。

パニックに対応する

視野を広く取る

過剰反応を止め、コントロールを取り戻すために有効な方法の一つは、視野を広く取るということ。視野を広く取るということは、周りをよくみることである。顔を起こして、ゆっくりと周囲を見渡すようにする。相手の反応や周囲の状況を観察するように目を動かし、しっかり見ることを意識しながら行動すると、冷静さを保ちやすい。

逆に悪い反応の仕方は、いまの苦しさ不安ばかりに注意をとられ、周囲をきちんと見られなくなってしまうこと。それは極度の緊張と、それにともなう視野狭窄の結果だが、自分におきていることがわからず、どんどん深みにはまってしまう。みんなの視線を感じ、自分が緊張しているという感覚に注意を奪われることによって周囲が見えなくなってしまう。

ゆっくり行動し、ゆっくり呼吸する

コントロールを失いかけている時に有効な対処方法は、呼吸を整えること。交感神経が緊張すると呼吸数は増えるため、自覚のないうちに、いつのまにか過呼吸になってしまいがちだ。

しかし、呼吸だけを意識してもうまくいかない。というのも、呼吸は体に起きている生理的な現象なので、ゆっくりしようとするなら、体の動きもゆっくりとしたものにする必要がある。

対処行動と言い聞かせる言葉

ほんの小さなことでも、自分の意志で行動し対処しているという感覚が、コントロールを取り戻すことにつながる。まず自分に言い聞かせる言葉をかけよう。「落ち着け。よく周りを見て。ゆっくり動いて。ゆっくり呼吸して。」という具合に一つ一つ自分に指示を出す。

それ以外にも、手を握りしめる、それを緩める。両手を組み合わせて同じことをする、自分の体をつかむ、たたく、おなかに手を当てる、冷たい水を飲む、といった行動が有効だ。そうした行動を自分の意志ですることによって、自身をコントロールしているという感覚を取り戻すことができる。

「社交不安障害 著者 岡田尊司」より抜粋 

ブログ作者の感想

さっそく子供に認知行動療法を試してみました。最近食べ物がのどに詰まる不安傾向があり、食事の際に不安になっていました。実践してみると不安スコアが日々減っていき、効果がありました。喉に詰まることで少しパニックにもなっていましたが、上記に書かれているパニック対応で落ち着かせることもできました。小さくても自信を見つけること、また不安を数値化することで客観的に自分を見ることは冷静になる一歩かもしれません。

子供にはこれから人生でたくさん不安状況になったときに不安解消の一つのスキルとして身につけてもらいたいと思いました。また、大人でも先の見えない不安なこの世の中、乗り越えていく一つの方法として覚えておいてもいいかもしれませんね。

下記はそのときの経過です。

日付状況不安を引き起こす思考不安レベル不安を超越する思考・根拠ある合理的思考不安レベル
5/1のどに詰まるのではないかという不安から固形物は拒絶する。ゼリー、アイスなどをいやいやながら食べるまたのどに詰まって苦しい思いをするき100ゼリーやアイスなどは食べれた。食べるのも嫌だったが、何とか喉につまらず食べれた。90
5/2まだ食べることが怖いが、ゼリーやアイスのみ食べるようにする。おかゆに挑戦して食べれた。不安感がまだ強い90よく噛んでたべることを意識した。おかゆは何とか食べれた80
5/3そうめんに挑戦してみた。少し食べれた。まだ固形物はのどに詰まる不安感は強い80食べれるものが増えていって自信が少しついた。70
5/4小さくした煮物、おかゆなどが食べれた。若干不安感は薄れてきたが、まだ不安70よく噛むことを意識して、固形物も少しずつ食べれるようになった。50

上記のような表を作り、一日の終わりに「今日食べれたもの」「少しずつ食べれてきたこと」などを話し合い、1日の始まる前と後での不安レベルを考えてもらい、不安な気持ち、不安レベル、不安を超越できたことを一緒に考えて回答・作成していきました。

少しずつチャレンジしてもらい、好循環なサイクルを作り出し、本人も徐々に不安レベルが下がっていくことを再認識して、不安軽減、自信もついてきたように日々感じました。

大切なのは、不安スコアを減らそうとあせらないことです。出来たことは誉めてあげること、しっかり話し合い不安な気持ちを聞いてあげること、不安が少なくなってきたねと数値で認識させてあげること。

精神科医、医学博士の岡田尊司の著書3選  アマゾンより

社交不安障害 (理解と改善のためのプログラム)
 ☆評価4

「発達障害」と間違われる子どもたち
 ☆評価4

自分で治す「社交不安症」
☆評価4
2023年5月19日現在

商品レビューから一部引用

社交不安障害

  • 今、不安の真っ只中にいる人はこの本に書いてあることを実践しようとする前に、「どうせうまくいかない」「一人ではできない」という思いが先に立つかもしれない。かくいう自分がそうであった。それが自分を縛る「思い込み」「とらわれ」であり、その「思い込み」「とらわれ」の要因、そして、そこから少しずつ自由になるための方法が、この本には小さなステップから例を挙げて丁寧に書かれている。(後略)
  • (前略)ストレスフルな人間関係においては、不安や恐怖に駆り立てられる必要はない。職場の良好な人間関係の構築も大切である。参考になる本だ。
  • 行き詰まったときにワラをもすがる思いで手に取りました。今後の人生に光をあててもらえた、素晴らしい作品だと思います。

発達障害と間違えられる子供たち

  • 保護者も教員も、今、本当に知りたい情報です。「発達障害」という言葉に納得できない人も多いはず。多くの人に読んでほしい1冊です。
  • 私は、20年以上乳幼児と付き合い、発達障害と言われることに疑問を感じていた点を、わかりやすく、そして自分の感覚として納得出来る内容が記してありスッキリし、子供達を見守る目のスキルアップに役立ちました。ありがとうございました。
  • 私には、これまでの概念を覆す内容でとても驚きました。
    そして、子どもたちの見方が変わりましたよ!!
    興味をもった方は、ぜひ読まれることをおすすめします。

自分で治す「社交不安症」

  • 認知行動療法と社交不安症について同時に理解を深めながら自己対処できる有益なワークブックだと思います。対人場面に不安を感じる人には参考になることがあるのではないでしょうか。
  • 認知行動療法と社交不安症について同時に理解を深めながら自己対処できる有益なワークブックだと思います。対人場面に不安を感じる人には参考になることがあるのではないでしょうか。(後略)
  • 自分は価値のない人間でいなくなった方がいいと思ってました。
    でもこの書籍を読んで訓練して立ち直ろうという気力が湧きました!

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