JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽頭科 JAXA宇宙飛行士健康委員 石井医師
連続して3日程度乗り続けると酔わなくなる
積み重ね効果で酔いは克服できる
石井医師はJAXAとの共同研究で20代男性300人以上を対象に、乗り物酔いと近い宇宙酔いの解明研究をしました。研究では被験者に回転するイスに乗ってもらったり、傾斜しながら目に刺激を与えるなどの負荷をかけ、乗り物酔いの発生率や自律神経の動きを調べた。
すると頭部と目の動きが激しくなれば乗り物酔いの発生率は増加するが、3日連続して刺激を与えると、乗り物酔いをする人が激減した。
「実は酔う人の体内では、ストレスホルモンと、危険な状態に陥ったときに水分をできるだけ中にため込もうとする抗利尿ホルモンが増加することがわかりました。酔って吐いてしまうから、体がこれ以上水分を出させないようにブレーキをかけるわけですね。この2つのホルモンが分泌されることは悪いことではなく、その環境に適応するための現象なのです。」
乗りなれて適応する
乗り物に酔いやすい人は2つの要素があり、1つは自律神経がナイーブで過剰に反応しやすいこと。もう一つはその乗り物に対する学習経験の不足という。
実は環境に適応するために分泌される上記のホルモンには脳の学習記憶を高める機能があり「乗り慣れて適応する」ことで徐々に分泌が減っていく。そしてそれが「日常の情報」だと脳の海馬に記憶されると、ホルモンは分泌されず、酔わなくなるという。
だから期間を空けず、連続して3日程度乗り続ければ「どんな乗り物でも大丈夫」と石井医師は強調する。
乗り物酔いの女性の克服体験
ジェットコースターに乗ると酔ってしまう成人女性が、子供と一緒に楽しみたいからと受診しました。チャレンジ1日目は酔い止め薬を服薬しても、酔って吐いてしまいました。
ところが2日目は服用すれば吐かない。3日目には服用しなくても乗れるようになったのです。
ポイントはたとえ服薬によって寝ていても、脳は学習経験を積んでいるという点。
ですから、酔ってトラウマになるような出来事を経験するくらいなら、乗る前に服薬して症状を抑える方がいい。寝ていてもそれは成功体験として残りますと、石井医師はいう。
なぜ人は酔うのか、そのメカニズム
目と耳の情報でズレが生じる
耳の奥にある「内耳」には回転加速度のセンサーである「三半規管」と重力センサーのような「耳石器」があり、耳からの情報と目で見た情報を脳内でリンクさせることによって、自分の体の動きや位置がわかるようになっています。
乗り物酔いに陥るステップは3段階
第一段階が目の動きと、耳からの情報で普段と違うズレが生じ、異常を感じた時です。これが酔いの出発点。乗り物酔いをしない人は、第一段階でズレを異常と感じないため、第二段階には進みません。
第二段階は、その異常を過去の記憶と照らし合わせ、偏桃体で「快適か不快か」を判断する。たとえばジェットコースターを楽しめる人は、第一段階で異常を感じても、「これは不快でない」と脳が判断するため、乗り物酔いの症状が起きない。
しかし第二段階で偏桃体が不快と判断すると、自律神経が反射的に異常反応(乗り物酔い症状)を起こしてしまう。これが第3段階です。
脳が不快ととらえると、乗り物酔い症状を抑えることは難しく、酔い止め薬を飲むしかなくなるという。
酔い止め薬
抗ヒスタミン剤が含まれた「トラベルミン」という薬が親しまれている。古いタイプの花粉症の薬で、内耳と脳の吐き気の中枢に作用して症状を抑える。副作用として眠気がある。
眠気が嫌な人は、漢方薬の「五苓散(ごれいさん)」を試してみるのも一つの手。これは水分の代謝異常を改善する働きがあり、二日酔いや内耳にむくみが起こって生じるめまいなどへの効果が期待できる。
乗り物酔いを防ぐ3つの対策
空腹を避ける
おなかが空いた状態もNGですが、かといって胃に油ものが残っている状態でも酔ってしまうことがわかっている。これは普段酔わない人も危ないです。おにぎり1個かバナナ1本程度を食べておくといい。
乗車中は目をつぶったほうが望ましい
どうしてもスマホや本を見たいときは、下を向くと乗り物酔いの第一段階のズレが起きやすいので、上向きになるかリクライニングがいい。
コンディションを整える
忙しくて疲れていたり睡眠不足だったりすると、脳が「不快」と判断しやすいから。
うつ病の可能性も
これまで乗り物酔いをしなかった人が、短時間の乗車や、走行が安定しているモノレールで酔うならうつ病の可能性もある。石井医師によると、うつ病は脳内で自律神経が過剰に反応している状態という。続くようなら医師に相談してもらいたいとのこと。
最後に
本来、乗り物酔いの多くの原因は、学習経験の少なさであると。積み重ね効果で必ず酔いは克服できるというから「乗らない」ではなく、むしろ積極的にチャレンジするほうがいい。
雑誌、プレジデントより参考、引用
ブログ作者の感想
私には子供が2人いますが、長男は乗り物酔いが少なく、次男は比較的酔いやすいです。なぜかと考えた時、幼いころ乗り物が大好きだった長男には休みの日には連日、電車やバスに乗せていました。それがよかったのかもしれません。次男は連日ではなく時々乗るくらいでした。その違いがあるのかもしれません。体質的なものだと思っていましたが、克服するには苦しくても3日連続で乗り慣れさせることなのですね。これなら出来そうですので、早速、次男には特訓です。
確かに、私も初めは飛行機やジェットコースターに酔っていましたが、間隔をあけずに乗り慣れると克服してきました。でも、けっこう間隔があいてしまうと酔うこともありますので、間隔があいた時には念のため酔い止めを飲むのがいいですね。